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議事録への署名(記名押印)を拒否された場合の対応

議事録への署名(記名押印)を拒否された場合の対応

司法書士が関与する中小企業における株主総会決議は「満場一致(全員賛成)」によって承認可決することがほとんどです。

先日ご依頼をいただきました案件では、株主総会の議決賛否に対して反対票が投じられ、さらには反対票を投じた株主が同社の取締役であったため、株主総会議事録への署名(記名押印)を拒絶したというレアケースでした。

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議長及び出席した取締役による議事録への署名(記名押印)の義務は、会社法施行に伴い廃止されました(旧商法第244条第3項参照)。

平成18年5月1日施行の会社法においては、出席した取締役等役員の氏名を記載することが必要と定められていますが、株主総会に出席した取締役等に対して株主総会議事録への署名(記名押印)を義務付けた規定は存在しません。

ただし、多くの会社では、定款において次のような規定を定めており、議事録には議長及び出席取締役による署名(記名押印)が必要とされています。

第●条(株主総会議事録)
株主総会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、これを議事録に記載又は記録し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、10年間本店に備え置く。

そこで、出席取締役が議事録への署名(記名押印)を拒絶した場合の対処方法が問題となります。

上記条項(定款規定)の内容を次のように改めることによって、出席取締役に対する株主総会議事録への署名(記名押印)義務を緩和することが可能です。

第●条(株主総会議事録)
株主総会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、これを議事録に記載又は記録する。

取締役会議事録については、(株主総会議事録と異なり)会社法の規定によって、出席した取締役(及び監査役)の署名又は記名押印が要求されていますので注意が必要です(会社法369条3項)。

登記手続における【出席役員が記名押印を拒否した場合の取扱い】について、次のとおり整理いたします。

●株主総会の議事録には、出席した取締役全員の署名を要することは当然であるが、株主総会終了後、取締役の中に死亡その他やむを得ない事由により署名できない者がある場合において、これを証するに足りる書面を添付し、その他の出席取締役の署名した議事録があるときは、登記の申請を受理して差し支えない

●取締役会議事録には出席した取締役全員の署名を要することは勿論であるが、取締役会の議事録につき、出席取締役の過半数(定款をもって決議の要件を加重した場合にはその加重された数以上)の署名した議事録があるときは、登記の申請を受理して差し支えない
(昭和28・10・2民事甲1813号回答、登記研究72号34頁)

●株主総会の議事録に出席取締役のうちの1名が記名捺印しない場合は、当該取締役の記名捺印を受けられない事情を付した代表取締役の上申書又は他の出席取締役全員からの上申書を添付させるのが相当である
(昭和38・12・18民四313号回答、登記先例解説集334号81頁)

●定時株主総会において再選されなかった取締役が議事録への署名を拒否した場合には、議事録作成者が署名を拒否する取締役の氏名と署名しない理由を議事録に付記し、他の出席取締役の署名(記名押印)がある総会議事録を添付すれば登記の申請は受理される
(藤島紀子「出席取締役の総会議事録への署名拒否と登記申請」旬刊商事法務1056号40頁

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